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話し手 CHERUBIMマスタービルダー 今野真一氏
聞き手 アールイートーキョー 鈴木薫
はじめに
2025年春に開催されたRE Bicycle Life Festival in Shanghai(上海)の会場にて日本を代表するハンドメイドバイクブランドCHERUBIMの主宰、今野真一氏にハンドメイドバイクやスチールバイクの可能性や優位性を解説してもらうトークショーが開かれました。このトークショーの中で今野氏が自転車競技におけるミニベロの優位性を解説し、会場に駆け付けた自転車ファンは勿論、私たちアールイーもそのロジックに魅了されたのでした。
それから1年の歳月を経て2026年春にCHERUBIM x CICLORE の初コラボ製品となるチタンミニベロ「Around CHERUBIM」がリリースされます。会場で説かれたミニベロの可能性、それを最新かつ高度なチタン加工技術を持つCICLOREの製造ラインで実現したらどんなドリーム・ミニベロが誕生するのか?今野氏の理論とCICLOREの技術を余すことなく組み合わせ今回のプロジェクトはスタートしたのでした。
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コラボレーションについて
【アールイー鈴木(以下鈴木)】 なぜ今回ケルビムとして異例ともいえるコラボレーションを受けて頂けたのでしょう?
【今野真一氏(以下今野)】僕たちは少量生産、オーダーメイドの工房になります、マスプロダクトの業界では僕たちの様な攻めた設計で製品をリリースすることは無いと思いますが、今回完全に自分たちの設計でモノ造りが出来るという点がコラボをお受けしたポイントになります。
また自社では手が出せないチタン3Dプリント技術やオリジナルカーボンフォークの製造などマスプロダクトの背景でモノ造りが出来る点もコラボレーションの大きな意義になります。
あと、CICLOREの人たちとのフィーリングが合ったのも大きな理由ですね(笑)
Around CHERUBIMの設計ポイント
【鈴木】 今回のAround CHERUBIMを乗ってみてフルサイズのロードバイクに近いフィーリングを感じました、設計のポイントをお聞かせください。
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【今野】 これは非常にたくさん有るのですが(笑)最も重要な点はハンドリング性能を重視した設計という事です。このジオメトリーには僕たちが経験上突き詰めてきたトレイル値(注釈①)が反映していて、先ほど述べたカーボンフォークの製作にも関わる話ですが、既製品では無く一から設計に関わりオリジナルフォークを製作したからこそ実現できたことになります。加えてタイトなホイールベースもこのモデルの特徴となります、これは走行フィールにも影響する部分なので蓄積した経験値が活かされています。
注釈① ヘッドチューブを延ばして路面と交わる点と前輪タイヤの接地中心点の水平距離の事
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【鈴木】 最初にジオメトリーを決めてから(ジオメトリーに関しては)大きな変更は無かったのですが、これは確信を持って導かれた数値だったということでしょうか?
【今野】 はい、それこそ今まで沢山小径車を造ってきましたから、イメージは明確でした。新しい技術として3Dプリントのチタンユニットや独自設計のカーボンフォークを取り入れた点がどの様に作用するか読めない部分もありましたが、サンプル車体が仕上がり工房のメンバー皆で乗ってみた時に狙い通りの良いフィーリングが確認できたのでとても安心しました。
ハンドビルドとマスプロの違い
【鈴木】ハンドメイド主体となるCHERUBIMが量産背景でモノ造りした今回のプロジェクトですが製作に取り組む中で設計アプローチの違いなどあったのですか?
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【今野】 オーダーバイクは個々人のポジションに合わせて製作をスタートしますが、マスプロダクトの場合特定の人格がある訳ではないので、仮想的に乗る人を想定しポジションを決めて行きました。
多くのマスプロメーカーに課せられている設計上の制約は如何にクレームの出ない車体にするか?という事だと思います。例えばフロント・センターの値にしても走行性能では無く「フロントホイールに足が当たらない」という走行の本質とは関係ない理由で設計が決定されていく流れがあります。
今回のモデルはマスプロダクションとして製造されますが、そういった本質的ではない要素は取り除き設計を進めていきました。
そもそも700cという規格はヨーロッパから出てきたものでフレームサイズ520mm~530mmが中心サイズとなる多くのアジア人にとってベストな規格とは言えません。そういった意味では車輪の小さなミニベロは多くのアジア人にとって最適な設計を可能とする車種なのだと思います。今回のモデルは小径車のメリットを存分に反映しマスプロ的ではない攻めた設計を行っています。
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今後のチタン、スチールバイクの進む道
【鈴木】 カーボンバイクが全盛の時代ですが今回のプロジェクトを通じて感じたチタンやスチールの可能性に関してお聞かせください。
【今野】 今回3Dプリンタで作られたユニットを採用しましたがこれは使い方を注意しなけなければならず、構造体に影響するような使い方をするのは良くないと考えています。例えばチェーンステー全体を3Dプリンタで製作するような事には懐疑的です。やはり金属フレームの性能を担保するのはパイプによるフレーム造り、強くバネ感があるフレームにする為には鍛えられたパイプを基本とした設計になると思います。
一方で3Dプリンタによる自由度の高いデザインは今までにないメリットとなります。例えば今回のモデルではヘッドチューブとトップチューブ、ダウンチューブの接合分もチタン3Dプリンタ製ですが応力が集中しないような大胆なフレア状の造形を可能にし、かつケーブルのインターナルルーティンも非常にスムーズとなっています。これは今までの金属フレームの世界には無い3Dプリンタのアドバンテージですね。
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カーボンと対比した時に金属フレームのメリットはノスタルジー、懐古趣味、ゆっくりとした乗り味のバイクといった文脈で語られることが多いのですが、金属素材のメリットというか役割は乗り味の選択肢として残っていく必要があると考えています。僕はスチールフレームが走行性能でカーボンに劣っているとは全く考えていないので例えば競技志向の人にも選択として選んでもらえればと考えています。
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あまりにも商業主義的な自転車シーンから距離を取り、もっと自分の価値軸で自身に合った選択が出来る時代にそろそろなっても良いのでは?と思っています。例えばプロの世界ではUCIがレギュレーションを決めるのは必要なことですが、趣味で自転車を楽しむ個人はそういった自分から遠く離れた場所で決められた規制や業界の都合に囚われず本質的な選択としてスチールやチタンの自転車を選んで欲しいですね。
今野真一氏プロフィール
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1965年創業のハンドメイドフレームブランド「CHERUBIM」のマスタービルダー。
その機能美溢れるフレームはNAHBSをはじめ海外のショーでも多くの賞を獲得し、世界中の自転車ユーザーを虜にしている。またプロ競輪選手からの信頼も厚くNJSビルダーとしても高い評価を得ている。更に日本初の自転車を学ぶ専門教育機関「東京サイクルデザイン専門学校」の学校長も務め後進の指導にも積極的に行っている。
CHERUBIMは1965年に今野真一氏の父、今野仁氏により設立。1968年メキシコオリンピックのトラック競技1000mTTで日本新記録を打ち立てた(6位入賞)フレームは今野仁氏の手によるものであった。仁氏はアイデアに富んだフレームを多く製作し、真一氏もその開発を手助けしながら多くの知見を得る。その中には多くの小径車や前後異径バイクも含まれておりその経験は今回のプロジェクトにも活かされることとなる。
東京・町田にあるCHERUBIMの工房は多くの若きビルダーがフレーム製作に携っており、取材日もトーチの火がまぶしく輝き、電動サンダーの音が工房中に激しく響いていた。












