RE TOKYO

チタンフレームの魅力

2023.11.17

普遍のチタンフレーム


アールイーがチタンに拘る理由


RE/アールイーのオリジナル車体「CICLORE/シクローレ」は全てのラインナップのフレームがチタンで構成されています。(ミニベロのAroundだけスチールモデルがありますが・・)

なぜ僕たちREがチタンに拘ってオリジナル車体を作っているのか?

今回の記事はチタンの素材としての魅力を深掘りし、その魅力を皆さんと共有できればと思います。



自転車の素材で世代が分かる?


「あなたが初めて手に入れた自転車のフレーム素材は何でしたか?」という質問はサイクリストの自転車キャリアを知るとても有効な方法です。

僕自身は初めて手に入れた本格的スポーツ自転車の素材はクロモリでした。


フレーム素材の変遷はレース機材としての進化の足跡と言い換える事が出来ます。

大きな流れとしては80年代中盤まではクロモリ、つまりスチールフレームがレースやツーリングとあらゆるシーンにおいてフレーム素材の中心に君臨していました。

その後、初期のアルミフレームが90年代からマーケットに登場し90年代中盤から2000年代初頭にかけてアルミフレーム全盛の時代を迎える事となります。

その後2000年代中盤以降本格的なカーボンバイクの時代がやって来て、現在に至るというのが誰もが異論のない流れだと思います。

それでは今回お話しするチタンバイクはどの様な時代背景の中から世に出てきたのでしょうか。


チタンフレームの変遷


チタンフレームはイギリスのSPEEDWELLが60年代に発表したものが最初期とされており、その後70年代にアメリカのTELEDYNEが量産フレームとしてリリースした事が知られています。

チタンフレームがレース機材としてTour de FranceやGiro d'Italiaなど一線のレース現場で活躍することになるのは更に時代が経過した90年代に入ってからとなります。


 

TELEDYNE 73年チタンロード(写真は引用となります)


前項で述べたアルミ全盛期の90年代に選ばれしエース級の選手たち、例えばイタリアPOLTIチームのエースMauro Gianetti がCoppiのチタンバイクで活躍し、94年のGiro d'ItaliaではGewiss-Ballan チームのエース Evgeni Berzin がDe RosaのTitanioを使用し総合優勝を果たしています。

その他にもTony Rominger など同時代に多くの名選手がチタンバイクで活躍しました。


De Rosa Titanioを駆るEvgeni Berzin(写真は引用となります)


このように活躍の兆しがあったチタンフレームですが、その後レースの最前線に姿を見せる事は有りませんでした。

何故でしょうか?

一つはその金属加工の難しさが大量生産向きでは無かったことが挙げられます。

チタンの溶接はその金属特性上、真空状態での作業が求められます。

現在は加工技術の向上で90年代当時ほど大掛かりな施設は要しませんが(それでも溶接加工の難しい素材には変わりありませんが)、90年代では真空状態を作り出す高額なドーム型の溶接施設の中での作業が必須でした。

このような生産性の悪さに加えチタン素材そのものが高額であった為、チタンフレームを製作できるのは限られた工場のみとなり、生産量の少なさから希少性の高い高額なもの、つまりレースに於いてはトップ選手への特別仕様車、マーケットに於いてはマニアックなお金持ちの為の嗜好品というポジションに留まる事となったのです。


今尚チタンフレーム?


このように機材として主流となり得なかったチタンですが、現在でも多くのフレームメーカーがレース機材とは違う位置づけを与えラインナップを維持しています。

代表的なものは先にも名前が出てきたDeRosaのTitanioが挙げられますが、ヨーロッパではPassoniに代表される工芸色の強いラグジュアリーブランド、チェコのFESTKAのような新興ブランド、伝統的にチタンバイクに特化したブランドの多いアメリカではLITESPEEDやMOOTSなどが現在も製造を続けています。

日本でも80年代からチタンフレームを作り続けてきたPanasonicが現在も進化版モデルのチタンバイクをラインナップに残しています。


なぜ彼らはチタンを諦めないのか?それはチタンの持つ素材としての可能性とその質感を高く評価しているからに他ありません。


チタンの素材的な特徴は耐蝕性の高さが一番に挙げられます。つまり錆びにくいフレームという事です。

他には一般的に認識されているチタンの特性で軽量性が有ると思いますが、単純な素材の比重を比べると意外な事にアルミ比で約1.6倍の比重があると言われています。

それではなぜチタンは軽量なフレームという認識が定着しているかと言うと、チタンの比強度はアルミ比で約2~3倍確保でき、パイプを薄く仕上げ、プロダクトとして最終的に軽量なものを仕上げる事が出来るからです。


このように錆びにくく軽量なチタンフレームですが、その最大の魅力はその乗り味に有ると僕は考えています。

多くのチタンフレーム愛好家が最新のカーボンバイクでは満足できず敢えて流行から外れたチタンフレームに向う理由としてもこの「乗り味」の良さを挙げると思います。


本質的なラグジュアリーバイク


初心者の方には乗り味と言われても少し分かりにくいかも知れません。身近なものに例えるとワインの味わいに置き換える事で理解しやすくなるかも知れません。

甘味、苦み、ボディ、フレーバー、余韻などワインを楽しむときに、それぞれの構成要素に対して味の好み(キレが有る方が良いなど)が有ると思います。

また合わせる料理により最適なボトルが変化していくと思いますが、自転車のフレーム素材もライド経験が上がっていくとフレーム特性を「味わう脚」が出来てきて、「最新のカーボンは硬い」「アルミフレームだと疲れる」「クロモリだと俊敏性が足りない」など好みが分かってくるようになります。

また、ワインにおける組み合わせ料理のように自転車をどのように乗るか?(のんびり?競うように?)など様々なコースやライドシーンに対してそれぞれに最適なフレームが見えてくるようになります。


チタンフレームの愛好家は競技志向のようなスピードの為にそれ以外の要素すべてをトレードオフで失うような乗り味は求めていません。

すこし概念的な言い方になりますが、ラグジュアリーな乗り味を求めているというのがしっくりくるかも知れません。

自転車の乗り味でラグジュアリーな感覚というと、しなやかさ(適度なウィップ感)×反応性(加速感)を高い次元で両立するという事になります。

高弾性カーボンのような身を削るような鋭さではなく、逆に伝統的なクロモリパイプのような鈍さでもない、リズミカルで軽快、しかし脚にたまる疲労感は心地よく穏やかなものという感覚です。


 

CICLOREのチタンピュアロード「Sharp」
金属フレーム特有のペダリングトルクが感じやすい特性と加速性・軽量性が両立する稀有なバイクです。重心位置を捉え易く急斜面の下り道も安定してダウンヒルを楽しめます。


世代を超えるバイク


競技の世界は常に最新技術を追い求めます。現在の主流素材のカーボンは進化の歩みを止めずに毎年ごとに新しい技術を提供しています。

しかし、最新=最善という構図の世界では古いモデルは価値の低いものとして隅へ追いやられてしまう事になります。

僕自身、自転車を選ぶとき最新技術のカーボンバイクにはやはり高い関心を持っています。最新モデルにはその時にしか味わえない高揚感が有ると思います。なので、少なくとも僕には最新カーボンモデルを否定はすることは出来ません。

一方で手元に残して長く愛用する自転車は何ですか?と問われると結果的にスチールフレームやチタンバイクのようなものになってきます。

自転車の性能に走行性能以外の要素を加えるとしたら(愛し続けられる)愛着性能のようなものになるのかも知れません。

僕たちは他人を打ち負かす為に自転車にまたがるのではなく、新しい世界に向かう時の相棒として自転車を選んでいるのですから。


そのような愛着性能の高いチタンバイクは錆びないという特性も相まって長く乗る事が出来るバイク、たくさんの思い出を共に作る事が出来るバイク、もっと言えば世代を超えて受け継ぐことが出来るバイクになると思います。

最終的に愛着とはお金を出して買うものではなく、共に過ごした時間や思い出と共に深まるものではないでしょうか。

そしてその愛着深い自転車が例えば自分の子供たちに思い出と共に受け継がれていったら本当の意味で普遍的バイクになったと言えるのかも知れません。


 

CICLOREのクラシカルフォルムのチタンロード「Classic」

時代を超越する黄金比で構成された細身パイプのホリゾンタルフレームが美しいディスクロードとなります。フラットバーなどでコミューターに仕立てる事もできる可変性、拡張性も魅力のポイント。